バスのたび

はしるたび、のつづきです。

小田急新宿駅西口のほうにある京王バス乗り場にやってきた。何台か出発前のバスが停車している。【永福町】行きか、【佼成会聖堂前】行きか。聖堂の前に着くほうがおもしろそうだな、よし。【佼成会聖堂前】行きに乗り込み、運転手さんに伝えて一日乗車券を買う。さあバスの旅のはじまりはじまり。さっきおやつのチョコも買ったし、楽しく行こう。

たくさん走った疲れもあり、たまにうとうとしながらあっという間に終点の佼成会聖堂前に到着。バスを降りた目の前の光景がこちら。

 

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知っていますか、普門館吹奏楽の甲子園球場ともいえる、全日本吹奏楽コンクールの全国大会の会場です。なんとここが終点だったのです。

中高と吹奏楽部だったけど残念ながら現役時代にまったく縁がなかった普門館に来られてうれしい、しかしなんだか様子がおかしい。写真でみたことのある外観がまったく見えず、青いシートで建物全体が覆われてるよう。「建て替え中なのかな…?」と思いうろうろしてみるもののよくわからず、iPhoneで検索してみる。

なんと普門館、建物の老朽化により2018年に閉館していたのです。今は取り壊す工事の真っ最中とのこと。知らなかった。

でも、すこしでも片鱗に触れられてよかった。

…としばらくここで感傷に浸りたい気持ちもやまやま、予想以上にここからのバスの本数が少ないようなのでちょうどやってきた【永福町】行きに飛び乗る。さっき新宿で選ばなかったほうの【永福町】行き、結局乗るのです。

普門館からだんだん遠ざかってたまに通ったことある道をバスがなぞったり、まったく知らない道をなぞったり。車窓を眺めながら座っているだけで体を運んでくれるバスってなんていい乗り物なんだろう。

【永福町】って、てっきり井の頭線の「永福町駅」に着くものだと思い込んでたけど、着いた先は永福町にある京王バスの営業所だった。ガラーンとした敷地にバスだけが整然と並んでいる場所で降りる。はて、ここからどうすればいいのか。

新宿でスタートしたときには「なんとなく西のほうに向かえばそのうち国立に着くだろう」と考えていた。しかしこの永福町の営業所からのバスが西のほうに出ている様子がまったくない。さっき通った一つ前の停留所、【西永福】まで歩いて、時刻表を見る。そしてようやく現実が見えてきた。ここから西に向かうバスって、実はそんなにないのでは…?

なぜなんの根拠もなしにバスだけで国立まで帰れるかも、と思ってしまったのか…。【西永福】のバス停の目の前にあるスーパー「サミット」の店内を意味もなくうろうろする。そうだ、わたしは福岡育ち、福岡は電車よりもバスのほうが移動がしやすいのだ。(わたしの主観ですが。)電車はJRと私鉄が一本とちょこっと地下鉄が走っているだけなのに対して、バスは都心から田舎のほうまで走っていて、乗り換えさえマスターすればわりとどこまでもいける。考えが甘かった。ここは東京、電車は私鉄もJRも入り乱れてじゃんじゃん走っている。そう、電車が便利。悪の囁きが聞こえる。《体も疲れてるんだし、諦めて永福町から電車に乗って帰っちゃいなよ…》いやいやいかん、ここで諦めるわけにはいかない。

ここでようやく京王バスの路線図を見る。検索したらなんでも出てくるインターネット、ありがとう。

今いる【西永福】から西に出ているバスはほんのすこし、ここから約3km先の【久我山駅】行き。朝、家から走ったときにゴールにしていた久我山駅、本日二度目の登場です。【久我山駅】まで行けば、細切れではあるが西に繋げられそう。よし、久我山までのバスに乗れば…!

 


なんと【西永福】から【久我山駅】行き、早朝8時台までしか走ってなかった。そうすると残る方法はひとつ、【久我山駅】まで歩くor走る。えーもうこんなに体バキバキなのに…。トボトボと久我山方面に歩き始める。なにか自分を奮い立たせることでもしなきゃ、やってられない。そう思ったところにサイゼリヤが見えてきた。よし、腹ごしらえでもするか!

 


サイゼリヤに入店して、すぐにランチメニューからパスタを注文、大盛り。わりとすぐにやってきて、もりもり夢中で食べる。大盛りを食べる快感ってあるよね…、あ、水取ってくるの忘れてた。あわてて水を取りに行ってゴクゴク、もりもり、あっという間に完食なり。さあ行くべ。

 


サイゼリヤを出て人見街道という道をまっすぐ行けば久我山に着くようだ。この辺は前に一度だけ走ったことがあるのでなんとなく親しみを感じつつ、気が向いたらゆっくり走って、だいたい歩いて進む。うん、お腹を満たしたら気分も落ち着いてきた。そうこうしてるうちにどんどん進んで、サイゼリヤから30分ほどで久我山駅到着。思ったよりあっという間だったな。本日二度目の久我山ゴール。さあバスに乗ろう。

ここからのルートは完全に京王バスの乗り換え案内の通りに進む。ほんとはもっと、迷ってもいいからてきとうに乗ったり降りたりして楽しみたかったが、いかんせん約21km走ったあと、疲労はもちろんだが時間が経つにつれて筋肉がどんどんこわばってきているこの体である、早くお風呂に浸かって筋肉をほぐしたい。ついに禁じ手である乗り換え案内を使ってしまった。すこしの罪悪感。

まずは【久我山駅】から【調布駅】行きを終点まで乗り、【調布駅】から【武蔵小金井駅】行きに乗ったら途中の住宅街で【府中駅】行きに乗り換える。京王バスの乗り換え案内、バスの乗り場の地図まで出るのがありがたい。きっちり案内に従ってバスを乗り継ぐ。

調布から府中のあいだは、朝走った道をなぞったりなぞらなかったり。

電車の乗り換えと違ってバスは乗り違えたり乗り過ごしたらなかなか簡単には戻ることができないことも多いので、すこしの緊張感。そとを眺める。自宅からさほど離れてないこのあたりも、知らない道を通っていると、どこか知らない街を旅してる気分。移り変わる景色を見てるのは楽しいし、自分の知らないところで営まれる人々の生活を垣間見られるのはおもしろい。だから走るのも楽しいのかもしれない。

 


なんてことを思いつつ【府中駅】に到着。府中市国立市と隣接しているのでホームも同然である。駅前のスーパーで買い物して、【国立駅】行きのバスに乗る。この辺はたまに走りに来たりもするので見慣れた景色。自分の頭のなかの地図と、今いる現在地がカッチリはまるかんじ。

ほどなくして自宅近くのバス停で下車、約4時間の長旅はおしまいおしまい。帰宅してお風呂にゆっくり浸かって、疲れをほぐしましたとさ。

 


ちなみにこの日の筋肉痛は翌日から2日間、けっこうハードだった。背中が痛いのがしんどかった。でもまた思いつきで走っちゃうんだろうな。

おしまい。